研究紹介
Research
Research

先進的聴覚検査(ACT)

ACT (Audible contrast threshold) は、スペクトル・時間変調検出検査の一つであり、変調を伴わないノイズを一定の間隔で連続呈示している条件下で、不規則なタイミングで変調度を変化させたターゲット音を呈示し、ターゲット音の反応により評価する新たな検査法です。

スペクトル・時間変調検出能は雑音下聴取能力と相関するため、ACT結果により被験者の雑音下聴取能力を類推することができます。また、ACTは被験者のオージオグラムを元に、呈示音圧を被験者が聴取可能な音圧へ自動調節している閾値上聴覚検査であるため、シグナル・ノイズ比(SN比)を指標とした検査と異なり、被験者がノイズを聞こえていない状況にはならないという特徴があります。

さらに、ヘッドホンで行う検査であるため広い検査環境を必要とせず、検査自体も2分程度で終わるため簡便であり、検査結果に応じた重症度判定と補聴器調整における雑音抑制機能などの、付加機能追加に関する推奨が得られるという利点もあります。難聴者におけるACT結果は雑音下聴取能力を反映する簡便な検査であると考えられ、検査結果を元に補聴器の付加機能設定の指標にしたり、他の聴覚検査との関連を評価することで、ACTを難聴者に行う意義や、既存の検査法では評価できていない難聴者の病態が今後より明らかになっていくと考えられています。

蝸電図の導入による感音難聴の鑑別診断と事象関連電位測位の導入による聴覚情報処理障害の評価

蝸電図

蝸電図は、音刺激によって生じた内耳および蝸牛神経の電気的反応を検出する検査です。電極を外耳道もしくは中耳内に留置する必要があり測定には技術を要しますが、より詳細な内耳の電気活動を評価することが可能です。当科においては、外耳道に電極を留置する方法によって蝸牛電図を測定する手法を確立しており、遺伝性難聴などの内耳性難聴や聴神経腫瘍における後迷路性難聴での内耳機能の評価として行っております。

事象関連電位

当科においては、脳波の一種である事象関連電位(P300およびミスマッチ陰性電位(MMN)、を用いた検査を行っております。事象関連電位は、外部からの特定の刺激に対して発生する脳の活動を反映し、当科では聴覚刺激に対する事象関連電位の測定を行うことができます。耳鼻咽喉科領域では、脳波の検査として、聴性脳幹反応(ABR)が使われますが、事象関連電位を測定することにより、ABRより、より中枢側の脳の活動を検出することが出来ます。本検査は、感音難聴の評価のみならず、聴覚情報処理障害などの中枢の関与が示唆される病態の評価・検討に有用な可能性があります。