研究紹介
Research
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側頭骨頭蓋底外科

聴神経腫瘍

聴神経腫瘍の初期症状は、難聴・耳鳴・めまいなど耳鼻咽喉科関連症状のことが圧倒的に多く、どのような症例に対して積極的な聴神経腫瘍のスクリーニングを行うべきか、に関する研究を進めています。診断された腫瘍に対しては、予想される自然経過を踏まえたうえで、手術・放射線照射・経過観察のいずれの治療方針が望ましいかを、国内耳鼻咽喉科で最大の患者数を診察してきた経験に基づき、適切に判断しています。
将来的に聴力喪失あるいは腫瘍増大の可能性が高いと判断される症例に対しては、経側頭骨手術を年間20-30例施行しています。聴力の温存が可能と考えられる症例に対する聴力温存手術では、最も精度の高い術中持続神経モニタリングを併用し(図・後述)、高い神経機能温存率を達成しています。「最終的に聴力を守ることのできる治療手段は何か」に関して、脳神経外科とも連携しながら、総力を挙げて取り組んでいます。

術中持続神経モニタリング

側頭骨頭蓋底外科手術においては、術後のQOLの維持のために顔面神経機能および聴力をいかに温存するかが重要な視点の一つとなってきます。当科においては、顔面神経機能・聴力ともに術中持続モニタリングを行う体制・設備が整っています。
術中顔面神経モニタリングでは、間欠的なモニタリングを行うことが一般的ですが、当科では3秒に1回という高頻度での電気活動をモニタリングする手法により持続的に顔面神経機能を定量的に測定する方法を用いています。本手法を聴神経腫瘍のみならず顔面神経鞘腫や真珠腫性中耳炎の症例に応用することにより高い顔面神経温存率を達成しています。
術中聴力のモニタリングでは、ABR(聴性脳幹反応)のモニタリングを行うことが一般的です。当科では、これに加えてDNAP(蝸牛神経背側核活動電位)を用いる方法を行っております。DNAPはABRよりより高い頻度で明瞭な波形を得ることができ、より精度の高いモニタリングを行うことが出来ます。また、一部の症例にはなりますが、聴神経腫瘍摘出術と同時同側人工内耳植え込み術を行う際には、蝸牛内電極を用いた持続モニタリングも可能となっております。これらの高度のモニタリング手法を駆使することによって、高難易度の聴力温存手術にも積極的に取り組んでいます。

その他の側頭骨頭蓋底外科領域の病変に対する先進的取り組み

側頭骨頭蓋底外科領域として当院では、聴神経腫瘍の他にもさまざまな疾患に対して積極的な先進的な取り組みを行っています。その中には、顔面神経鞘腫に対する術中持続モニタリングを用いた顔面神経機能を温存しながらの腫瘍摘出術や頭蓋底破壊を伴う真珠腫性中耳炎・腫瘍性病変・炎症性病変に対する高難度な手術などが含まれます。また、人工内耳植え込み術に関しても対象症例に対しては同側聴神経腫瘍摘出術を同時に行うことが可能となっており、腫瘍摘出のみならず術後の聴力再獲得を目指した治療を行っています。

当院は日本頭蓋底外科学会の頭蓋底手術見学施設となっており、随時見学ご希望の方を受け入れております。