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大石直樹センター長
大石 直樹
センター長
インタビュー
Naoki Oishi Interview

01 生活に密接に関わる機能外科に惹かれ

慶應義塾大学医学部を卒業後は、浦和市のさいたま市立病院、静岡赤十字病院、宇都宮市の済生会宇都宮病院を経て再び慶應義塾大学病院に戻りました。
その後2年間、ミシガン大学に研究留学にいき、帰国以降12年間、当院で勤務をしています。2021年までは外来医長として、外来診療の現場の責任者として患者対応やスタッフの管理を行っておりました。その後、現職の診療科副部長に着任以降、耳科領域の責任者として診療に励んでおります。
専門に耳鼻科を選んだ理由は、機能を改善する手術にやりがいを感じたためです。耳鼻科の手術は、聞こえや声、飲み込みを良くするなど、生活に密接に関わる機能を改善する役割があります。さらに、耳鼻科は老年から子供までの幅広い患者さんを診療するため、小児科に興味があった自分の関心もカバーできる点も魅力的でした。内科的な診断と薬による治療だけでなく、外科的に、幅広く生活に関係する機能を扱えるところが耳鼻科の面白さだと感じました。

02 「きこえ」を改善し、患者さんの生活・人生をサポート

聴覚センターは、聴覚障害(難聴)でお悩みの方々の相談・治療を行う専門施設として、2024年に開設いたしました。小児から高齢者までのあらゆる聴覚障害を、チーム医療として専門的に診断、治療にあたります。患者さんの聞こえが少しでも改善し、より豊かな生活をおくっていただくことを目標にしています。
当センターの一番のコンセプトは「きこえ」です。きこえに問題がある状態は、みなさんが想像する以上に、生活全般、人生に大きな影響を及ぼします。聞こえを良くすることで、より豊かな人生を過ごすことができます。少しでも聴覚に困ることがあれば、ぜひ受診してご相談ください。当センターのチームは聴覚の専門家に加え、脳神経外科、小児科、放射線診断科など、さまざまな分野の専門家で構成されています。聴覚だけでなく、脳の機能や認知機能、子どもの発達など、多方面から総合的に患者さんをサポートする体制が整っています。

03 聴覚障害の原因や症状

聴覚障害とは、音が聞こえない、または聞こえにくい状態を指します。耳のきこえには、外耳や中耳、内耳、脳といった各部位が適切に働くことが必要です。しかし、何らかの原因で各部位に異常が起こると聴覚障害が生じます。病気や事故、加齢などの要因で生じることがありますが、生まれつきの場合もあります。
聴覚障害は障害されている部位によって、「伝音難聴」、「感音難聴」、「混合難聴」の3つに大きく分類されます。伝音難聴は、外耳炎や中耳炎など、外耳や中耳の音を伝えるところの問題で生じる難聴です。感音難聴は、内耳から脳の聞こえの中枢までの問題に起因する難聴。そして伝音難聴と感音難聴の両方が存在する場合を混合難聴と呼びます。聴覚障害が起こると、音は聞こえているが、何を話しているか分からない。大勢の人の中や、雑音がする環境で会話がしにくい。時計のアラームなど高い音が聞き取りにくい。言葉がうまく発音できない、スムーズに出てこない、というような症状が現れます。症状が重い場合、音がまったく聴こえなくなってしまうこともあります。
耳の形状の図形

04 診療を希望される患者さんへ

当センターでの診療をご希望の患者さんは、まずは地域のかかりつけ医(内科や小児科、耳鼻科の先生)に相談し、当センターで診察を受けたい旨を伝えてください。簡単でもいいですので紹介状を用意していただければ、予約が必要になりますが、当センターでの診察を受けることができます。緊急の突発性難聴の場合は、可能な限り早く治療を始めることで回復する確率が高まります。遅れるとめまいや耳鳴り、耳閉感(耳が詰まった感じ)が固定されてしまう確率が高くなりますので、この場合はすぐに受診をしてください。

05 高度な検査と、あらゆる治療を網羅

当センターの大きな特徴、強みは、熟練した検査技師や最新の検査機器を揃え、世界の新しい技術をいち早く取り入れていることです。他の病院では受けられない検査や治療も、当センターではほぼすべて網羅しています。世の中にある可能な評価をほぼ網羅して、かつ治療の最先端の一番難解な手術から、内科的な薬物の治療までを含め、すべてをカバーできています。特に、耳の手術は脳外科と密接に関連していて、その中でも非常に難しい手術の一つに「聴神経腫瘍」の治療があります。聴神経腫瘍とは耳の奥、小脳橋角部という部分に出来る良性脳腫瘍の一種です。私は日本聴神経腫瘍研究会の世話人代表として、脳外科の専門家と共に診療と研究に取り組んでいます。当センターは、この難易度の高い手術を行える数少ない施設です。
また、小児難聴や老年性難聴に対する治療にも注力していて、補聴器や人工内耳、人工中耳といった器械を用いた聴覚診療も積極的に行っています。このような難易度が高いと言われる手術や治療は、日進月歩で進化しています。常に知識や技術をアップデートしながら、新しい情報を取り入れることが求められています。

06 正しい情報発信で、難聴治療への理解を広げる

私は市民講座やメディアを通じて、難聴や耳鳴りに関する情報を広く発信しています。一般的に抱かれている難聴に対する誤ったイメージと、実際に医療で行えることの、ギャップを減らすためです。実際に、聞こえの症状で来院された患者さんが、適切な説明を受けて症状が改善するケースが多くあります。最近は随分減りましたが、インターネット上には間違った情報も多く、それを信じて来院する患者さんもいらっしゃいます。当センターではより広く、正しい情報を発信する重要性を強く感じています。

07 地域の開業医の先生方、医療関係者の方へ

診療体制の確立と、診療クオリティの向上を短期的な目標として、多くの患者さんを受け入れるため、優れた医師や検査技師を集めることがまず第一に重要だと考えています。長期的な目標としては、若手医師やコメディカルスタッフ(検査技師や言語聴覚士)の教育があります。特に聴覚を専門とする言語聴覚士の育成は、社会的にも課題となっています。当院のような教育の機会が豊富な環境で経験を積んだスタッフたちが、全国に散らばって聴覚診療のレベルを向上させることを、大きな目標と考えています。
まだ評価が十分にされていないようなテーマの研究を進めていくことも、当センターの目標の一つです。たとえば加齢性難聴の進行に伴う認知機能低下や、認知機能の評価、難聴と認知機能の関係などに対して、臨床と研究を進めながら、データを収集していきたいと考えています。また、子どもに関しても当院には多くの合併症を持ったお子さんが来院されます。その中には難聴も含まれますが、評価が十分にされていない現状がありますので、症候群性難聴の評価と対応に積極的に取り組んでまいります。難聴でお困りの患者さんは、非常に多くいらっしゃると思います。
地域の先生方には、少しでもお困りのことがあれば、ぜひ当院にご紹介いただけたらと思います。当院で患者さんの症状を詳しく評価し、患者さんにとって最適な治療をご提案いたします。診察の結果、現在の治療を継続することが最適だと判断される場合は、患者さんを元の先生のもとに戻して引き続き診ていただくこともありますが、当院で新たな問題や治療の必要性を見つけた場合は、適切な対応を行います。医療関係者のみなさまに対しても、手術や外来の見学、研究協力など、お気軽にお問い合わせをいただければと思います。
Doctor profile
大石 直樹 慶應義塾大学耳鼻咽喉科 准教授・診療科副部長・聴覚センター長
専門領域
耳科学・側頭骨頭蓋底外科学(中耳手術、聴神経腫瘍手術など)
聴覚医学(補聴器、聴覚検査など)
経歴
慶應義塾大学医学部卒業
慶應義塾大学耳鼻咽喉科 助教
ミシガン大学耳鼻咽喉科 訪問研究員
慶應義塾大学耳鼻咽喉科 専任講師・医局長
慶應義塾大学耳鼻咽喉科 准教授・診療科副部長(現職)
慶應義塾大学病院 聴覚センター センター長(現職)
認定資格等
日本耳鼻咽喉科学会 専門医・補聴器相談医・補聴器適合判定医(厚生労働省)
日本耳科学会 理事・耳科手術暫定指導医
日本聴覚医学会 代議員・講習会委員会委員長
日本頭蓋底外科学会 理事
日本聴神経腫瘍研究会 世話人代表
日本顔面神経学会  評議員・編集委員
など